職ありオタク

がんば

Ava's Demon Chapter Eleven 和訳

 また和訳した。

 今回は台詞少なめですが、物語がさらに進展するというか、謎がまた生まれるというか……。

 この作品の面白いところは、読むたび、更新されるたびに新たな謎が生まれて、それがいまだに解かれることがない、というところです。小さな解決はほとんどなくて、いくつもの謎を推進力に、ゆっくりと、巨人が歩くように大きくファンの心を揺さぶりながら進んでいきます。

 公式HP

Eleven


906 「あー、そうか……。気のせいかな。寝ちゃったのかな」(直訳「全部頭の中にある。寝たと思う」になり、さすがに変なのでこういうニュアンスだと思う。しらべたらIt’s all in your head.=気のせいだ、と言う意味で、fall asleepは無意識のうちに寝たことを指すらしい)
907 「アヴァ、ゴニョゴニョ言ってるのはあなた?」「うわ、あの人何してるの?」
908 「どうしてわたしの兵隊たちと起きてこないの!?」「判ってるって、魔女さん」
911 「ウラシア! ねえ、ウラシア!」
912 「ウラシア! はあ、み、見つけた……」
913 「見つけたわ……戦士……」
914 「戦士? “たち”じゃなくて? 戦士ひとりだけ?」
915 「あら。そんなに興奮しすぎないで」(or anythingってこれでいいのか? ネットで引くと「~か何か」の用法がほとんどだけど、この場合は違う気もする。)
916 「たぶんね……わたしこの人見つけたわ! どう? 強そう!」(多分これでニュアンスあってる。ここのAvaかわいい)
918 「トゥルス……テネブローズ……」「トゥルス?」「わたしが採用した中で一番暗くてやる気のないバカ」
919 「真面目なこと言うと、こいつが早々に助けてれくれるっていうのは疑わしいものね。思うに……こいつは確かに強い。とはいえ、それも気分がいい時だけ」
920 「そんな時はほとんどないんだけどね、ちなみに」
921 「うーん……あなたみたいな女王様といていい気分ならないなんてことある?」「まったくよね」(ここ自信ない)
922 「必要なら、彼を誘ってみて。無駄骨になるだろうけど。せいぜい補欠かしらね」(二文目これでいいのかな、自身無。Buck-up plan=代替案、at best=せいぜい。勉強なるわ)
923 「まず旦那を探してちょうだい……あるいはネイヴィ・ナーヴィン……それかトゥルスみたいに悲壮感を養分に育ってるようなやつじゃなければ、どの戦士でも」「トゥルス、とてもいいと思うんだけど……それに主人のほうはたまたま私にとって大切なひとだし」(三文目めちゃくちゃ意訳なんだけどこれには少々ワケがある。mulch=マルチ(根覆い)は農業とか菜園を知らないひとには全く伝わらない言葉だと思ったので。まんま訳すと「あるいは悲しみでマルチング(根覆い)されてるんじゃない戦士」というような文になるが、そう言われてもピンとこないしなあ、となった。まあ、皆さんこんなとこはまともに読んではいけない。ご自分で原語をお読みください。あとネイヴィの名前は薬の名前だそうです。ナーヴァインかと思ったけど読み上げソフトに準拠。)
924 「少しくらいは助けになってくれるはず」「あっそ」
926 「ここでガーデニングも始めたの? すごい」
927 「ガーデニング? 何言ってんの。ガーデニングなんて召使がやることでしょ」
942 「ここ……とても素敵……落ち着く感じ」(to still be my mindがわかりまへん)
944 「なにこれ……??」
947 「アヴァ!?」「ま、マギー……どうして……」
948 「ここでなにしてんの!?」「わ、わたし……」
949 「またこの変な森のお友達登場ってわけ!? はっ! 妖精だけじゃ飽き足らず!?」(もうなにもわかりまへん。ニュアンスとしてはこうだと思う)
950 「出てけ!」
951 「出てって! はやく!」「わたしの中から出てけって!?」
952 「あんたの中!?」
953 「信じらんない!」
954 「あいつの魔法を台無しにする気? この錯覚!」「あいつ?」(どうしても綺麗にならなかったんです、許してほしい。直訳「彼の魔法を無駄にする精巧な魔法!!」怪しい日本語botみたいになった)
955 「トゥルスのこと!? そうでしょ?!」
956 「うっさい、ふざけんな!」「で、でも、わたし錯覚なんかじゃ!」(Cut the crap=くだらない話はやめろ)
957 「ゴホッ わたしホントのアヴァよ、本物の! あなたの中かもしれないけど……あ、溶岩……わたしの中でもあるの!」
958 「なんでふたりともここにいるのか判らないけど……あなたが本物のマギーなら……わたしはあなたの中に……」
959 「そ、それで、トゥルスとパクトをしたんでしょ! ね!? パクトは完全なの!?」
960 「わたしもなの、わたしにだけ見える悪魔がいるの! それであなたみたいにパクトを! お、お互い助け合うことって出来ない……?」
962 「マギー……お願い……」
963 「お願い……」(めちゃくちゃ意訳になりますが言い訳すると、このlet me help you は重すぎて訳せなかった。直訳は「手伝わせて」とかになる。困ってる相手にかける言葉になるのだが、本当はアヴァが助けてほしいはずだ。let me help youにはそれがこもっているように思う。そのすべてを込めた日本語はどうなるだろう、と考えて、こうなった。まあ翻訳のひとって偉いと思う。原作が好きすぎて訳せないってなに? 限界オタクムーブです)
965 「絶対信じらんない……」
966 「あなたがわたしを助けてくれるって?」
972 「ごめんね……」
973 「陸がでこぼこしてるみたい……けど、間に合ったよ!」
974 「起きて、みんな! 遅れらんないよ! タイタンの下にいるんだからね……」
975 「誰かこのライトぶっ壊してくれない? そういう気分じゃないんだよね」「に、日光だよ、バカ」
976 「エヘン そうだな、とにかく……」
977 「アヴァ、オーディン……」
978 「ふたりとも外で見張っててくれないか? マギーと話がしたいんだ……二人っきりで。お願い」
980 「コホン こ、来いよ……行こう……」
983 「さ、マギー……」
984 「気分は?」「ギル……ごめん、なんだっけ?」
985 「僕が医者になる日さ、忘れた?」「ああ、そう! へへ……マジで意識飛んでたかも……」
986 「訊いておきたかったんだけど、ぼくと一緒に来るんだよね? ホントに大丈夫?」
987 「一緒に……?」「僕と一緒に来て、フォロワーになるんでしょ?」「あ……うん! そうそう! 全然大丈夫!」(直訳「旅をする準備は出来てる? 考え直しはきかないよ」「旅?」「一緒に旅をしてフォロワーになるんだろ?」になる。旅とか旅行って言葉を使うと急に格式張るというか、野暮ったくなったので)
988 「アヴァとオーディンを難民センターに連れていく。どう?」「う、うん……いいね……」
989 「鏡ってないかな……この船?」「出口のとこのちいさなクローゼットなら」
990 「急いでね……」「うん、判った……」
996 「まだ大丈夫……」
1000 (crawl=クロールは這って動くときの擬音らしい。カチッ ウネウネ……みたいな? それにしてもここら辺のMaggieかわいい)
1003 「いまがそのときよ、みんな!」(ただただ可愛い)
1006 「うーん……完璧だ……」
1007 「こんなにたくさん、け、警備がいるなんてな……」「待って、何て?」
1008 「行けると思ったんだがな……こっそり貨物船に忍び込んで……けどな……」
1009 「こんなに壮観な場所を忘れるところだったなんて!」
1010 「ゲートの向こうはもっとすごいよ! ほら早く! 警備員だって噛みゃしないんだから!」

 

  今まで訳すときに大変だったところは、言い回し知らなくて変な文章になったり、一文が長すぎて訳すのに手間取ったり、そもそも物語の前提をきちんと捉えられてなかったりってことがほとんどだったのですが、このChapter Elevenはそのどれでもなく、言葉の意味に真剣に取り組むと、直訳できない、ということでした。

 それは個人的に、かなり困りました。今まではよく判んなくても直訳でゴーしちゃえばいけるでしょって感じで訳出してるとこがあったのですが、今回は「直訳したらキャラクターのハートが伝わらないんじゃないか」っていう心配が出てきました。まあ、そんなこと心配する必要はないんですが(そして訳し始めた当初は自分の意思を意図的に排除していたのですが)、ここ最近は「みんなに読んでもらうためには、自分の意思を介入させざるを得ない」という気持になっており、つまりそれは本当の意味で翻訳を始めるということになるんじゃないかな、と思ってやっておりました。

 Avaの「let me help you」はまさにそれで、これをまんま「助けさせて」みたいなことを言わせると台無しになるなってことが判ってきます。しかし言葉の意味から離れないように訳すと、キャラクターのハートから離れざるを得なくなります。それは日本語と英語の持つ性質(それは文化であり意味であり……)に集約されると思います。では言葉の意味から離れて、Avaのハートを伝えるにはどうするのか? 私の解釈を言葉にするしかないのです。これは本当に困りました。結果として、前に放った「お互い助け合う」という言葉を再提出する「お願い」という言葉を選びました。絞り出すように、二度「お願い」というAvaの姿の切なさが、つまりわたしにとってのAvaの解釈になります。

 好きすぎて語ってしまった……。