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『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』感想

 多分今回短い。ネタバレ、主人公が○○される間際と○○されたあとの感想と話自体の全体像について。

 

  見どころは主人公が逮捕される間際からラストまででしょうな。フランクが逮捕される間際に「カール! 君ひとりでぼくを捕まえてみせて!」的なことを言うのだが、ここで思い切り「逃亡」しつつも「捕まりたい」という矛盾した願望をむき出しにする。これって大人でも思うひととかいるとは思うんだけど、青少年に顕著に表れる一面だと思う。「手首は切るけど死にたくない」とか「褒められたいけど汗はかきたくない」みたいな子供じみたわがままな願望。まあ、フランクは未成年なので仕方がない。

 印刷所でカールに「嘘をつけ! もっと嘘をつくんだ」と文字通り嘘を求めながら捕まることを望むフランク。手に抱えているのは、自分がいままでついた嘘に相当する数の偽造小切手。カールの言葉「外には20人の警察がいて、君ひとりが外に出れば殺すつもりだ」というのを(おそらく嘘だと感じながら)信じて、自ら手錠をかける。外に出ると、聖歌隊の他だれもいない。

「うまく嘘をつくじゃないか」

 とフランクは嘘によって捕まったことを満足に思うが、すぐにパトカーがかけつけ、拳銃をつきつけられる。カールの言葉は本当だったのだ。フランクはその「本当」に気付いて、絶望の表情を浮かべる。

 なぜ、フランクは「本当」の言葉に絶望し、「嘘」を求めたか? 

 捕まったフランクはその後も逃げ切り、自分の母親の元へ帰る。すると、家の中に母親の再婚相手とも娘を見つける。そこで再びフランクは捕まる。

 なぜ、本当や現実はフランクを追い詰めるのか?

 

 つまりこの『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』という映画は「小切手詐欺犯が捕まる」話ではなく、「青少年が現実から逃避し続け、それでも向き合わなければならなくなるまで」の話なのだ。

 なぜ逮捕された後の話が大事かというと、後味の良い終わり方だからというわけではなく(もちろんいい気分で観終れたのだけど)仕事を始める……社会に参加するシーンがおおざっぱながらも丁寧に描かれているからである。

 フランクは小切手偽造の知識を生かしてFBIで働くことになる。しかし嘘ではなく「本当」に仕事をするということに嫌気を感じて、再び逃避をする。しかしすぐにFBIであるカールがフランクの居場所を突き止め「でも君はもどってくるだろう」と言い渡す。なぜ? と返すフランクに、カールは笑いながら、

「だって、君をおいかけるやつなんて誰もいない」

 フランクは結局、FBIに戻って仕事に取り組む。カールと向き合いながら「この犯人、絶対つかまえてやろうぜ」と話しているフランク。その2人のアップから、だんだんカメラは引いていき、FBIの仕事場で、たくさんの人々がはたらいている姿が、その姿の中にふたりが紛れているところで、映画は終わる。

 このカットは「フランクは社会に順応していきました」という意味だと思う。自分はこのカットを見て、なんだかほろりと涙を流してしまった。

 

 

 ちなみにだが、フランクが詐欺犯になるきっかけが両親の離婚で「父と母どちらと暮らす?」という問いから逃げるため家出をする。そこから長く逃亡し続け、映画が展開していくわけだが……。

 これ、実話らしいのだがどこまで実話かは判らない。けれどうまく「青少年の逃避行動」のお話としてまとめたのは、なかなか綺麗で良かったと思う。何様だ俺は?

 

 なんか面白い構図とかないかなって観てたけどあんまりありませんでした。