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がんば

『お早よう』感想

 あんまり言うことないです。

 

  小津安二郎はいちど興味を持って観たくなったことがあったのだけど(おそらく3,4年前)あのとき観なくて正解でしたね。映画に本当に興味を持つ前に観ても、ただ「おれはこだわっている」という余計な想いを増長させるだけだったと思います。たしかにすごいし面白いし、とことん「映画」してる。だけど本当に映画に興味を持たないと面白くないんじゃないかな、とも思う。

 脚本がまずすごい。何も事件が起こってないのに、事件性を感じる演出・構成なのが『スタンド・バイ・ミー』より以前にあるのが驚きだった。『スタンド・バイ・ミー』も同じく事件性のない映画で、最後に少年時代に出会った親友がいまは死んでいないことを示して終わる。いままで画面に映っていた者が死んでいるということは、90分を共にしただけなのに旧く懐かしい友を失くしたかのようになる。

 けれど『お早よう』は誰も死なない。誰も変化しないし、何も進まない。しかしひととなりをそのまま見せるだけで面白いし、その面白さは押しつけがましくない。

 最後、ルンペンの男と、男が好意を寄せている女性が会話をするシーンなんかは微笑ましくニヤニヤしてしまうし、兄弟が河川敷でおひつから手でご飯を食べるシーンもなんとも言えぬよさがある。

 日本人のつくる「状況のおもしろさ」「シリアスとくだらなさの同居」は、案外こういうところから伝播していっているのかもしれない、と思う。

 まあ、とりあえずこのへんで。