読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

結果無職

がんば

『暗くなるまで待って』感想

 すごい以外の感想がねえ。

 

 

 

 まず本がすごい。隙がない。盲目の女性を使ったトリックもすごい。そして盲目の女性がひとりで悪人の男三人と行き渡ってるのがすごい。かっこいい。

 電話線を切っているシーンや指紋を拭くまでの流れとか、伏線の張り方の美味さがすごい。

 それに終盤に差し掛かるあたりで盲目の女性がすべての電球を割っていくシーンの盛り上がり方ったらない。盲目の女性が、献上でずる賢い三人に対抗できる唯一の手段だ。悪人と盲目の女性のどちらが生き残ったのか、それを観客がすぐに判らない、そのドキドキ感をカメラワークではなく「状況」で作り出すのも、舞台原作ならではの演出だ。

 

 舞台原作なだけあって場面がほとんど家の中。退屈するかと思いきや話の巧みさで見入っていく。始めのうちは悪者三人の会話で進行するので、こちらもその三人に移入していくのだけど、後に盲目の女性スージー主導の進行になるので、三人が「悪者」だという自覚がこちらに出てくる。その視点の移動のさせ方も巧みだし綺麗。

 グローリアというクソガキがいるのだけど、最終的にそのクソガキが最後の望みになる。そこも上手い、グローリア助けてくれ!ってなる。まあスージーがなんとかするんだけど。

 薄暗い中での格闘もすごい、サスペンス的な盛り上がりする。また冷蔵庫が唯一の光源になるのだが、その鮮烈な白色の光が作り出す濃い影と、暗い中に浮き出るオードリー・ヘップバーンの美形な顔立ちが綺麗だ。

 

 時々『パシフィック・リム』などを取り上げて「映画館で見るべき!」「スクリーンでの大迫力!」とか言うが、個人的には『パシフィック・リム』よりも『暗くなるまで待って』の方が「映画館で見」たい映画だったかな。部屋の電気がすべて消え、画面が真っ暗になるシーンがある。真っ暗になってしまった時の驚きや引き込まれ方はすごい。これが映画館で、自分の周りすらも真っ暗な状況だったらどうだろう? よほどドキドキしただろうと思う。画面が真っ暗なだけあって、聞こえる衣擦れの音や呻き声を出来るだけ聞き取ろうとするし、先ほどよりも大きく聞こえる気もする。この瞬間、観客は初めて本当にスージーの目線に立ち、また疑似体験を出来るのだ。この試みは、映画が出来る、非常に「演劇的」な演出だった。やっぱり名作と呼ばれる映画は名作だったんや!