結果無職

がんば

冬の到来

 外に出たら冬の匂いがした。埃っぽいとか呼ばれてるアレだ。個人的には埃っぽいというか、こもった、湿った、という感じだが、まあそれだ。したのだ。冬だ。寒いのだ。

 

 さて、今日ちょっと嬉しかったことがあってそれをドヤ顔で自慢したい。とりあえずドヤ顔しながら書く。

 とある授業で、自分で金払ってみてきた舞台の劇評を書いて、各グループごとに推し劇評を選びディベートするというイベントをした。その時は皆でワイワイディベートなう! って感じのテンションで、ベスト3に僕の劇評が選ばれたのだ。京都エクスペリメントの一環で上演されていたShe She Popというパフォーマンス集団の『シュプラーデン(引き出し)』という舞台だった。なんか女の人が口げんかしたり百合展開入って僕がニヤついたり女性器の写真がドアップで映し出される感じの舞台だった。面白かった。

 で、まあ女性器はどうでもいいのだが、教授が何故か僕の劇評をいたく気に入ったらしかった。授業は以前のディベートで選ばれた劇評のダメ出しみたいなものだったのだけど、まあ結構こき下ろされていた。そしてさすが教授と言おうか、ためになるダメ出しだったのだ。

 一向に僕の劇評が読まれないので、あーダメだったか、とちょいションボマンになっていると、それでは本題に入りますが、と教授が仕切り直すように言った。

「腹の中にびわくんの劇評がねぇ、なかなかどうして、良かったんですよ」

 ビックリして顔を上げる。教授と目が合った。思わずお辞儀をした。

 なんでも、僕の書いたそれは劇評と言うよりは一個人の経験として素晴らしい経験をしている、読んでいて一番引き込まれた、と言うのだ。おう、もっと褒めてもええぞ。と思っていた。

 まああとは何言われたかあんま覚えてないが(嬉しすぎて)素晴らしい体験をした、と思う。久しぶりに褒められた。しかも日本で一番演劇を見ている批評家にだ。うーん、嬉しい。実家に帰ったら自慢しようと思う。

 教授が「腹びわ君、知の喜びだね」と言っていた。ニーチェの言葉らしい。それに関してはよく判らなかったが、たとえ話が面白かった。

 螺旋階段を上がっていて、どこに向かってるのか判らない。けどある地点に到達すると、景色が広がっている素晴らしい場所に出る。そういう経験をしたんだね、と言われた。まあその通りだった。それが大事なんだ。それを知ってしまうともう逃れられない。そこからが本当の勉強の始まりなんだ。そう言われた。

 判るのだ。魔力があるということはすでに何年も前から知っているのだ。だから芸術学科に入ったのだ。そしてこの感覚を判ってくださり、気持ちいいよね、と笑う教授がとてもありがたい存在に思えた。そうなんです、気持ちいいんです。も、やばかったっす。まくしたてたかったが「ええ、もう……」と照れ笑いしかできなかった。

 しかし周りの皆はシャイなのかそういう経験はないという。どうしてお前らここにいるんだよ。

 

 さてその直後のお話。授業も終わりぼやっとポケモンXでヌメルゴンのレベル上げにいそしみつつリアル用アカウントでTwitterを眺めていると、とあるツイートが流れてきた。それは僕の劇評とディベート上でバトルした劇評を書いたK山さんのツイートであった。

 その日さっきの教授にまあまあボコボコに言われていたK山さん(劇評についてと若干性格とセンスについて)は、なんとか八つ当たり的に教授に噛みつきたかったのだろう。とある発言を否定するツイートをなさっていた。

 まあその発言とは

「3流のパッとしない俳優なんかが、意外にも10年後20年後に大俳優になってたりする。大杉漣なんかが特にいい例だ」

というものなのだが、それに対し

「パッとしない人は周りからの期待が無いからのびのびやれて生き残れる」

と言うようなdisを繰り広げていた。

 まあ、そういう部分はあるんだろう。大きな期待をかけられることは有難いが、しかし悩みの種にもなりうる。しかし、だ。それを君が言うのかい、K山さん。

 それと、パッとしない(期待のかけられない)人間には悩みが無いという旨の発言に見えるのが、僕には一番気に食わなかった。悩みのない人間がいるものかよ悩みのない世界があるものかよ。誰しも悩むし悩まねばならない。解決策なんておそらくどこにもない。けれども向き合わねばならないのだ。そうじゃなけりゃ俺は自殺未遂なんて起こさねんだよこらと言いたかったがフォロー外から「それはちょっと違うんじゃないかな(^_^;)」みたいなことを呟いておいた。面と向かって嫌われるのは嫌だ。ただでさえ好印象でないのに。

 そして、このパッとしない人間と言うのは、考えすぎかもしれないが、おそらく僕のことをさしているのだ。そして自分はパッとしている才能がある、と言いたいんだろう。なんだとこら。その通りだけども。言っちゃいけない奴やそれは。

 ちなみにこの日、K山さんは僕にだけパリ土産をくれなかった。ションボマンになった。